一見便利なように見えるので愛用者も多い伸縮リード (フレキシなど) ですが、様々な危険性や問題点も指摘されており、自治体が管理する公園やドッグランなどでも使用が禁止されている場所が増えてきました。
犬を飼っている方々だけではなく、特に犬に興味のない方々や、犬が嫌いな方々が感じる不快な印象や反感は、結果的に犬の社会的立場を弱めることに直結してしまいます。
USHIO.net ドッグトレーニングでも、伸縮リードは「飼い主が楽ちん(な気がする)」という唯一のメリットに対して弊害が多く、あえて使用する必然性は無いと考えられるため、使用禁止とさせていただいております。
以下に具体的な理由をご説明をさせていただきますので、ご理解いただけると幸いです。
愛犬の体格にあわせて、通常のリード (1.2~2m) とロングリード (5m~15m) を併用するのが基本です。
飼い主がリードワークを身につけて、愛犬とのコミュニケーションを楽しみながら散歩やアクティビティを実践しましょう!
犬が苦手な方への配慮
伸縮リードの全長は他者には分からない
犬が苦手な方やアレルギーがある方など、犬と一定の距離を保ちたい方は意外と多くいらっしゃいます。伸縮リードの場合、使用者以外には距離感が掴みづらく、犬がどこまでの範囲で行動可能なのか第三者には分かりません。飼い主がロックを掛けずにいると想定以上に犬が近づいてくることになり、特に犬が苦手な方は恐怖を感じたり、怒りを感じたりします。
伸縮リードは視認できない
伸縮リードは巻き取りをスムーズに行うために、メインのリード部分は1mm前後のとても細いワイヤーでできています。このため、第三者からの視認性がとても悪く、特に夕暮れ~夜間はリードの存在が第三者からはほぼ見えません。
事故の危険性はもちろん、ノーリードで散歩しているように見えるので、犬が苦手な方にとっては精神的な負担になります。
事故が起こりやすい
伸縮リードは巻き戻らない
伸縮リードは、ロックを外した状態で犬が引っ張ることでどんどん伸びていきます。
長いものだと最大長10mの商品もありますが、一度伸びたリードは犬が飼い主のもとに戻るか、飼い主が犬のもとに駆けつけないと短くなりません。
車や人・犬への対応など、急な対処が必要になった場合には、ロックを掛けてリードが伸びないようにすることが可能ですが、その時点で伸びた分のリードを巻き取ることはできません。
例えば5m伸ばしていた場合は、ロックを掛けても飼い主を中心に直径10mの範囲で犬は自由に行動できることになります。
普通のロングリードは手繰り寄せたりリリースしたりと、両手でコントロールしながら使うものなのでこういった問題は起こりません。逆に伸縮リードで同じように手繰り寄せようとすると、細いワイヤーで火傷をしたり手を切ったりします。
伸縮リードは絡みやすく怪我しやすい
伸縮リードは気軽に扱いやすいため、公園などでは長く伸ばして散歩させている方も見かけます。
しかし、ワイヤーが細く視認性が低い伸縮リードは人や犬に絡まりやすく、火傷をしたり切り傷を負わせたりする、結構危険な犬具でもあります。シュッと擦れただけでパックリ傷口が開いたりといったこともあります。
公園には幼児や子供、他犬も居ます。
実際に、自転車に乗った子供に絡まって転倒し、足に絡まったリードで火傷したり、他犬に絡まって腱を傷めたりといった事故を、わたしたちも目にしています。
伸縮リードは落としやすい → 犬が暴走
一般的なリードの場合はリードの輪を親指にかけて握り込み、必要に応じてもう一方の手でコントロールしたり、リードの中間を足で踏んだり (コントロールポジション) して安全を保ちますが、伸縮リードは樹脂製ボディにグリップが付いており、片手で握って使用するようになっています。
手のひらでグリップを握るしかないので、飼い主が他のことに気を取られたり、愛犬の急な引張りがあったりすると簡単に手から離れて落下してしまいます。
うんちの処理中に伸縮リードのグリップを離してしまい、ヒヤッとした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?伸縮リード本体と飼い主の手首を繋ぐためのストラップも販売されていますが、あまり使用している方を見かけたことはありません。
伸縮リードの落としてしまいやすい特性に加えて、伸縮リードのボディは樹脂でできているので、落とした衝撃で大きな音が出ます。それに驚いた愛犬がパニックダッシュしてしまった場合、走る愛犬の後ろを追ってカラカラと、無限に愛犬を後ろから煽り続けることになってしまいます。
結果、道路に飛び出してしまい交通事故。という悲劇も実際に起っています。
伸縮リードは複雑な構造 → 壊れると危険
伸縮リードは犬具としてはとても複雑な構造をしています。
巻取りのための金属製板バネやブレーキ用パーツ、ワイヤーを目詰まりなくスムーズに巻き取る開口部など。毎日一定の負荷がかかる使用環境を考えると、安全性のチェックも慎重に行いたいところです。ですが、毎日伸縮リードの動作チェック、特に巻き戻しとロック機構の動作チェックをしてから散歩に出る方はほぼいらっしゃらないと思います。
経年劣化の問題では、咄嗟のときにワイヤーが巻き取れなかった、ロックボタンをかけたのにブレーキが効かずワイヤーがどんどん伸びていってしまった、といった事故が多いようです。
飼い主と愛犬の関係に影響
意思の疎通が難しい
通常のリードの場合、親指にかけて長さを調節し、状況によっては両手でコントロールしながら散歩します。リードは張らずにたるんだ状態を維持し、飼い主は周りの状況や愛犬の状態を判断しながら、犬は飼い主やリードの状態も意識しつつ、相互にコミュニケーションを取りながら歩きます。
ところが伸縮リードの場合、グリップの構造や細いワイヤーのせいで人と犬がコミュニケーションを取りづらく、巻き上げ機構の影響でリードはピンと張りがち。飼い主に愛犬をコントロールする技術が身につかなければ、それは犬にとっても不幸です。
犬が自分の行動範囲を把握しにくい
伸縮リードは通常のリードやロングリードと違って、視覚的にリードの長さが分かりません。
これは犬にとっても同じで、飼い主からどこまで離れることができるのか、いつ飼い主にロックを掛けられてブレーキが掛かるのかも判断ができず、飼い主とのコミュニケーションが成立しにくくなります。
引っ張りグセを助長する可能性
伸縮リードはロックを解除すると、常にワイヤーに巻き上げのテンションが掛かります。
犬が飼い主から離れていく際、板バネによる巻き戻しのテンションに反抗しながら進んでいくことになりますので、犬は常に抵抗反射が起きている状態 (引っ張り状態) になってしまいます。
気管虚脱やむち打ち症の可能性
通常のリードは、とっさの場合にリードを手繰り寄せたり伸ばしたりと、長さの調整が自由にできます。人間が腕と手で扱うので、犬が急な反応をした場合でも人体がクッションとなって衝撃を和らげることができます。
一方、伸縮リードの場合はロックを掛けると唐突にブレーキが掛かるため、犬の体に大きな負担がかかります。
伸縮リードの長さが長くなるほど、犬がダッシュした際の加速度も大きくなるため、ロック機構を使用した際の衝撃も大きくなります。むち打ち症や気管虚脱になる可能性もあるそうです。